Peridot島の1日

困ったことになったもんだ。場合によっては、引っ越さなくちゃいけないかもしれない。

原因は島の中央にある日、突然、出現した秘密基地。

そこには以前、わが家とは対照的にコンクリート打ちっ放しの現代的な家が建っていた。庭の片隅にN30というスタジオセットが設置されたおしゃれな家だった。「持ち主はカメラマンかな？　姿を見かけたら、話しかけてみよう」と思っていた矢先、家が消えた。

「あれ、引っ越しちゃったぁ」と思っていたら次の日、敷地を囲むように高い塀が立てられ、中では数人のアバターが危険な香りの漂う建物を建てていた。家というより建造物、住宅ではなく基地のような建物だ。アバターたちはサイバーパンク小説に出て来るような兵士の格好をしていて、頭の上には「D & D member」とか「xxxx Warrior」といったグループ名が表示されている。

おいおい、ここで戦争ごっこかよぅ？

さらに次の日、怪しげな建造物は姿を消し、高い塀も撤去された。見上げると、はるか上空に雲に霞んだ四角形が見える。どうやら、あの建物は宇宙船型スカイポッドだったようだ。空き地に戻ったその土地には、熱帯林にありそうな数本の不気味な木が植えられている。よく見ると気味が悪いけれど、とりあえず平穏な日常に戻りホッ。



と思ったのもつかの間、地上基地のような建物、ヘリポート、サーチライトや訓練器具のような装置などが設置され、平和の島Peridotは再び退廃的な空気に包まれ始めたのだった。



基地作りを楽しんでいるのかその後、彼らはちょくちょく土地の装飾を変え、戦闘機かロケットの残骸のようなものが転がっている。

Peridot島は、以前書いたように、13のパーセル(土地)に分割されている。全員に会ったことはないが、土地所有者の大半はここを安らぎの場、くつろぎの場と考えているようで、のんびりした雰囲気が島中に漂っていた。そこに秘密基地が作られたのだから、さあ大変。慌てふためいているのはぼくだけではないようで、Peridot島のあちこちで異変が起き始めた。



わが家の北側の土地は売却済みだったものの、所有者が家を建てる気配はまったくなく、ずっと空き地のままだった。おかげで遠くまで見渡せて、実に気分がよかった。RLじゃ、こんなことはあり得ない。そのお隣の土地が、基地ができた数日後に突然、売り出されたのだ。ああ、ついに始まった。



今までは島のどこにも自由に出入りができたが、土地の周囲にバリアを張り巡らせて関係者以外立ち入り禁止にする所有者も表れた。さらに数日後、気がつくと島の北西端の土地から建物が消え、その翌日、その土地も売りに出されていた。まだ売りには出されていないものの、北東の端の土地からも家が消えている。

たとえトラフィックが少なくても、建物が建っていれば「のんびりできるね」と平和な気持ちでいられる。でも、これだけ空き地が目立ってくると、そんな悠長なことは言っていられない。

というわけで、冒頭の「困ったことになったもんだ」となる。地上げにあって、執拗な追い出し工作にもめげずに頑張っている頑固な地主になった気分だ。よし、こうなったらガンバルぞ！　と、わけの分からない決意を胸に本日は終了。